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不定期に、「ミホールの本棚」としてとりあげる本をここにまとめておきます。探している本がある場合は、ブラウザの検索機能を使ってください。評価は五つ星を最高とする尺度によっており、星の数は「★ 良い点をさがすのが困難」 「★★ かなり良い」 「★★★ 第一級(年間ベスト・ブック・クラス)」 「★★★★ 抜群、数年に一冊出るか出ないかのクラス」 「★★★★★ 不朽の名著、その分野の古典と呼ばれるに値する」です。つまり、通常、「最高」と呼ばれるようなものは三つ星です。
Francis James Child: The English and Scottish Popular Ballads (Loomis House P, 2001-) バラッドの古典的著作。このほど新版の刊行が始まり、現在、2巻まで刊行(全5巻)。この新版によりチャイルド教授が百年前に意図したバラッドの姿がいま蘇ろうとしている。アイルランドの歌とも深い関係があり、たとえば 'Lord Randal' のアイルランド語版をジョー・ヒーニーが歌っている('Amhrán na hEascainne')。
この本は古典としての評価が確定している。バラッド研究をやろうとする者には不可欠の文献であり、今回の新版の出版社はバラッドや伝統音楽などの専門出版社である。五つ星は決まったようなものだが、活字がやや小さく、抜群に読みやすいタイプフェイスともいえないので、その組版の問題だけで半星減じた。
今回の版は修正版(Corrected edition)と銘打たれており、編集をおこなったのは Mark Heiman と Laura Saxton Heiman である。その最大の目的は、百年前にチャイルド教授が意図した改訂を完全な形でおこなうことにある。つまり、長年(1883-1898)にわたる刊行の間に教授自身が気づいた訂正や補遺といった記述が前の版ではうしろに追いやられていたのが、今回初めて本来のあるべき位置に組入れられたのである。このことの便宜ははかり知れない。しかも、前の版における頁数も明示されており、新旧の対照に抜かりはない。
バラッド研究者は長いこと、このチャイルド・バラッドの基本文献の入手には苦労してきた。絶版状態がずっと続き、古書相場は高騰する一方であった。ところが、やっと、近年になって Dover から復刻版が再刊されて容易に入手できるようになり、さらに、この修正改訂版の登場である。やっと渇がいやされ、存分にバラッドの世界を探検する下地ができた。まことにめでたい。
20世紀のフォーク・リヴァイヴァルを直接に支えた本を挙げるとすれば、まず、このチャイルド・バラッド。そして、つい最近 EFDSS により復刻された Classic English Folk Songs (旧 The Penguin Book of English Folk Songs) となるだろう。
本書は全5巻で 305 篇のバラッドを収める。一見するとそれほど多くないようだが、それぞれに別ヴァーションが複数載っており、綿密に伝承が跡づけてある。伝承渉猟は古代ギリシアから中世ノルウェーにまで及ぶ。
たとえば、上記の 'Lord Randal' (12番)を見ると、21 ものヴァーションが収められている。うち、楽譜つきのヴァーションが3つあり、この歌だけで、詳註もふくめて計 25 頁がついやされている。まさに、バラッドに関心をよせる者にとっては宝の山と言っていい。 (2 March 2004)
評価―― ★★★★☆